犬・猫の遺伝子検査でわかること、わからないこと
最終更新: 2026年8月12日
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犬・猫の遺伝子検査でわかるのは、生まれ持った体質としての病気への「なりやすさ」です。今その病気にかかっているかどうかを調べる診断ではありません。遺伝子は変わらないため検査は1回でよく、個人向けキットはPontelyが5,500円〜、VEQTAが4,950円〜です(2026年8月時点)。
- 調べられるのは単一遺伝子疾患の保有因子。項目外の病気や、複数の要因が絡む病気は分からない
- 結果は「クリア・キャリア・アフェクテッド」の3区分。キャリア・アフェクテッドでも必ず発症するとは限らない
- 遺伝子は生涯変わらないため、検査は1回受ければよい
「うちの子は将来どんな病気にかかりやすいんだろう」。そう思って調べ始めた方も多いと思います。 遺伝子検査は、頬の内側の粘膜を採取して、その子が生まれ持った体質として特定の病気に「なりやすい傾向があるかどうか」を調べる検査です。 元気なうちにできるペット終活の備えのひとつとして紹介されることもありますが、 「意味がないのでは」という声もよく見かけます。ここでは、わかること・わからないことを分けて整理します。
わかること
遺伝子検査でわかるのは、単一の遺伝子が原因で起こる病気(単一遺伝子疾患)について、その原因遺伝子を持っているかどうかです。 Pontely公式FAQによれば「現状では、検査が可能な病気の多くは、単一遺伝子疾患です」とされています。
結果は「クリア・キャリア・アフェクテッド」の3区分で表示されます。Pontely公式FAQの説明は次のとおりです。
- クリア: 原因遺伝子を持っていない
- キャリア: 原因遺伝子を1つ持っている(発症する可能性は疾患により異なる)
- アフェクテッド: 原因遺伝子を2つ持っており、発症する可能性がある
ジャパンケネルクラブ(JKC、監修: 鹿児島大学共同獣医学部 大和修教授)によれば、犬の遺伝子疾患は約700種が特定されており、 そのうち200以上の疾患で原因となる遺伝子変異まで特定されています。獣医学の進歩とともに、この数は年々増えているとのことです。
わからないこと
一方で、遺伝子検査には明確な限界があります。JKCも「遺伝子疾患の全てをクリアにすることはできません」と述べています。
- 検査項目に入っていない病気は、そもそも調べられません。原因遺伝子が判明していない病気もまだ多くあります
- 複数の要因が絡む病気は対象外です。単一遺伝子疾患ではなく、多数の遺伝子や環境が絡み合って発症する病気は、今の検査では判定できません
- 食事・運動・ストレスといった環境要因は、検査結果に反映されません
- 「今病気かどうか」は検査ではわかりません。調べているのは生まれ持った体質で、現在の健康状態ではないためです
そして、キャリア・アフェクテッドという結果が出ても、必ず発症するとは限りません。Pontely公式FAQは「アフェクテッドは必ず発症するのですか」という質問に対し、 「必ず発症するとは限りません。アフェクテッドの発症する時期は個体差があり、一生発症しないで過ごす子もいます」と答えています。
この点はJKCも一致して注意を促しています。「キャリアと判定された健康な犬を積極的に排除することは、動物倫理に反する行為です。キャリアもペットとして飼育することになんら問題がありません」。 結果だけを見て、その子の将来を決めつけないことが大切です。
「意味がない」と言われる理由と、それでも受ける意味
検索してみると「遺伝子検査は意味ない」という声も見かけます。その根拠は、おおむね次の3点に集約されます。
- 検査項目に入っていない病気はわからない
- 遺伝以外の要因(食事・環境・加齢・ストレスなど)も病気に関わる
- 診断ではない(今病気かどうかはわからない)
この3点は、上で書いた「わからないこと」とほぼ重なります。つまり、この懐疑はどれも的外れではありません。
そのうえでPontely公式FAQは、「全て調べられないなら意味ないのでは」という質問に対してこう答えています。
「遺伝性疾患発症後、『調べておけばよかった。事前に可能性を知っていればよかった。』という、飼主さまの声は多く存在します。全ての遺伝性疾患の原因遺伝子が判明しているわけではありませんが、ペットが健康なうちから、未病予防の観点を踏まえて、ペットとの共生生活を送ることができる。そこに、分かる病気は検査する意味がある、と考えております」
「全部はわからない。それでも、わかる範囲を知っておくことに価値がある」という立場です。 これを納得できるかどうかは人によります。受けて安心材料にする人もいれば、受けない判断をする人もいて、どちらも普通のことだと思います。
シニア期との関係
遺伝子検査は生まれつき変わらない体質を調べるものなので、シニア期になってから受けても意味は変わりません。 ただ、元気なうちに「なりやすい病気の傾向」を知っておくと、日々どこを観察すればいいかの的が絞りやすくなります。
たとえば結果でキャリア・アフェクテッドとなった疾患があれば、その病気の初期に出やすい変化を意識して見ておく、という使い方ができます。 これは病気を防ぐという医療的な効果を約束するものではなく、あくまで観察のポイントを絞る材料としての使い方です。 気になる変化があれば、検査結果の有無にかかわらず、かかりつけの動物病院に相談するのが基本になります。
個人向けキットの比較
自宅で完結する個人向けの遺伝子検査キットとして、一次情報で価格を確認できたのはPontelyとVEQTAの2社です。
| サービス | 対象 | 価格 |
|---|---|---|
| Pontely(犬) | 35疾患・99犬種対応 | 5,500円〜15,400円(税込・3段階) |
| Pontely(猫) | 10疾患・41猫種対応 | 5,500円〜15,400円(税込・3段階) |
| VEQTA(犬) | 1項目〜、6項目セットあり | 4,950円(1項目)〜21,450円(6項目セット・税込) |
Pontelyは犬種・猫種ごとに「獣医師が推薦する疾患」を優先度順に検査するプラン設計で、Starter(1項目)・Suggest(2項目)・Health(3項目)の3段階です。 VEQTAは1項目から選んで組み合わせる形で、6項目セットのほか、柴犬専用の項目もあります。
OrivetJapanとアニコムパフェも上位に出てくるサービスですが、今回の調査では公式ページで価格を確認できませんでした。 Orivetは一次ページに直接アクセスできず、アニコムパフェは問い合わせ制のため、数字を載せていません。申し込み前に各社公式サイトで直接確認してください。
受け方と流れ
個人向けキットの採取方法はどこも共通していて、通院の必要はありません。
- キットが自宅に届く
- 付属の綿棒で、頬の内側の粘膜をこすって採取する
- キットを返送する
- 結果が届くまでの目安は約2週間(Pontelyの場合)
遺伝子は生まれてから変わらないため、検査は1回受ければ十分です。Pontely公式FAQも「検査は、どれくらいの頻度で受けたほうがよいのか」という質問に「遺伝子の検査ですので、1度で問題ありません」と答えています。
動物病院で受ける場合
遺伝子検査は動物病院で受けることもできますが、単体の検査として院内メニューに料金を掲げている病院サイトは、今回の調査では見つかりませんでした。 実務上は、動物病院が検体(血液など)を採り、専門の検査ラボに外注する形が一般的です。
これに対してPontely・VEQTAのような個人向けキットは、病院を介さず自宅で完結し、価格もあらかじめ公開されている点が違います。 動物病院ルートでの実勢価格は、今回確認できていません。気になる場合は、かかりつけの動物病院に直接尋ねるのが確実です。
よくある質問
犬・猫の遺伝子検査は意味ないですか?
「検査項目に入っていない病気は分からない」「環境要因もある」「今の健康診断の代わりにはならない」という限界はあります。ただしPontely公式は「分かる病気を事前に知ることに、未病予防の観点で意味がある」という立場を示しています。項目外の病気まで分かる万能な検査ではない、と理解したうえで受けるかどうかを決めるのがよいと思います。受けない判断も、もちろん普通にあります。
何歳から受けられますか?
遺伝子は生まれたときから変わらないため、理屈のうえでは子犬・子猫の時期からでも結果は同じです。ただし各社の公式な受付年齢の基準までは今回確認できていません。年齢の条件は申し込み前に各社公式サイトで確認してください。
ミックス犬・雑種でも受けられますか?
Pontelyの一般問い合わせによれば、ミックス・雑種でも検査自体は可能です。ただし対象外の犬種・猫種では、その遺伝子変異の発症可能性についての報告が少ないため、結果の記載を伏せる場合があるとのことです。
結果が「キャリア」だったらどうすればいいですか?
キャリアは原因遺伝子を1つ持っている状態で、発症するかどうかは疾患によって異なります。Pontely・JKCとも「キャリアでも必ず発症するとは限らない」と説明しています。ジャパンケネルクラブは「キャリアと判定された健康な犬を積極的に排除することは、動物倫理に反する行為」とも述べています。心配な場合は結果を持って、かかりつけの動物病院に相談するのが安心です。
健康診断の代わりになりますか?
なりません。遺伝子検査が調べるのは生まれ持った体質としての「病気へのなりやすさ」で、今その病気にかかっているかどうかを調べるものではないためです。Pontely公式も検査結果について「正確性・完全性を保証するものではない」と明記しています。日々の健康診断や動物病院での受診の代わりにはならない、別の情報として受け止めるのがよいと思います。
出典
- ジャパンケネルクラブ「遺伝子疾患について考えよう」(監修: 鹿児島大学共同獣医学部 大和修教授): jkc.or.jp/pedigrees/geneticdisease/
- 日本経済新聞「犬の民間遺伝子検査、米国で流行 信頼度を研究者が検証」: nikkei.com(米コロラド大学の研究チームによる検証。犬種構成の鑑定精度に関する研究で、単一遺伝子疾患のリスク検査そのものの精度検証ではありません)
- Pontely公式サイト: forowner/犬の遺伝子検査、order/aboutplan、question/disease、disclaimer(2026年8月12日確認)
- VEQTA(株式会社ベクタ)公式サイト: veqta-onlinestore.com(2026年8月12日確認)
- 株式会社ケーナインラボ「遺伝病検査の一覧表」: canine-lab.jp/genetic
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