先に逝った子のあと、残された子の元気がない——飼い主426人の調査
最終更新: 2026年8月15日
気のせいではなさそうです。同居犬を亡くした飼い主426人のうち、86.6%が残された犬の変化に気づいていました。ただし研究者は「これが悲しみだったとは、まだ確認できない」と書いています。
- 変化があったと答えた飼い主は86.6%
- 多い順に、そばに来る67%・遊ばない57%・動きが減る46%
- 続いた期間は2か月未満29.4%、2〜6か月32.2%、6か月以上24.9%
- 遺体を見せたかどうかは、変化の長さに影響しなかった
- 飼い主自身の悲しみや怒りが強いほど、犬の変化も大きく報告された
一頭を見送ったあと、残された子がごはんを残す。玄関で待つ時間が増える。自分がつらいから、そう見えているだけかもしれない——そう思って口に出せずにいる方もいると思います。
同じことを400人以上に尋ねた調査があります。8割を超える飼い主が、同じものを見ていました。
よく言われていること
「犬も悲しむ」と言われます。一方で「動物は死を理解していないのだから、飼い主の思い込みだ」という言い方もあります。どちらも耳にしますが、数で確かめた話はあまり出てきません。
この調査は、その両方に対して部分的な答えを出しています。変化は確かに起きている。ただし、それを悲しみと呼べるかは別、という形です。
その調査は、どう作られたか
2頭以上の犬と暮らしていて、そのうち1頭を亡くした経験のあるイタリアの飼い主426人に、質問票へ答えてもらったものです。残された犬の行動と、飼い主自身の気持ちの両方を尋ねる作りになっています。
この調査のもうひとつの柱が、飼い主自身の気持ちです。犬の変化が本当に起きていたのか、それとも悲しんでいる飼い主にそう見えただけなのかを、あとから切り分けるための材料になります。
対象は飼い主であって、犬を直接観察したわけではありません。
結果の数字
86.6%が変化に気づいていた
何らかの変化があったと答えたのは86.6%でした。内訳は次のとおりです。
| 変化 | 割合 |
|---|---|
| そばに来る・かまってほしがる | 67% |
| 遊ばなくなった | 57% |
| 動きが減った | 46% |
| 寝ている時間が増えた | 35% |
| 怖がりになった | 35% |
| 食べる量が減った | 32% |
| 鳴くことが増えた | 30% |
いちばん多いのが「そばに来る」だったのは、意外に感じるかもしれません。元気がなくなる方向の変化ばかりが語られがちですが、実際にいちばん多く報告されたのは、飼い主にくっついてくる形の変化でした。
どのくらい続いたか
| 期間 | 割合 |
|---|---|
| 2か月未満 | 29.4% |
| 2〜6か月 | 32.2% |
| 6か月以上 | 24.9% |
| 変化なし | 13.4% |
3割ほどは2か月のうちにおさまっていて、一方で4分の1は半年を超えて続いています。いま続いていることが、そのまま一生続くわけではありません。そして、長引いているからおかしい、ということでもありません。
遺体を見せたかどうかは関係しなかった
残された犬に亡くなった子の体を見せたかどうかで、変化が続く長さに違いは出ませんでした。
「最後に会わせてあげられなかった」ことを悔やんでいる方には、ひとつの材料になるかもしれません。入院先で看取った、事故で叶わなかった、といった事情はどの家庭にもあります。少なくともこの調査からは、そこが後々の長さを決めたとは言えませんでした。
どんなときに変化が大きかったか
2頭の関係が親しかった場合や、親子のような関係だった場合、そして食べ物を分け合う仲だった場合に、変化が大きく報告されていました。
そしてもうひとつ、飼い主自身の悲しみや怒りが強いほど、残された犬の変化も大きく報告されるという関係が出ています。
分かっていないこと
著者ははっきりと、これが悲しみだったとは確認できないと書いています。同居していた相手がいなくなったことによる不安や、生活のリズムが変わったことへの反応かもしれず、人が感じるような悲嘆と同じものだと示せたわけではない、という立場です。
飼い主の気持ちと連動していたことについても、二通りの読み方があります。犬が飼い主の様子を感じ取っているのかもしれませんし、悲しんでいる飼い主のほうが犬の小さな変化に気づきやすいのかもしれません。この調査では分けられません。
ただ、著者は後者だけでは説明しにくいとも述べています。飼い主が犬をどれだけ人間のように見ているか、どれだけ愛着が強いかといった傾向とは、報告された変化が関連していなかったからです。思い込みだけで作られた数字ではなさそうだ、という補強になっています。
もうひとつ、この調査はイタリアの飼い主を対象にしたものです。暮らし方や見送り方の習慣が違えば、数字も変わりうると考えておくのが妥当だと思います。
この調査から使えること
見えているものを疑わなくていい
まず、8割を超える飼い主が同じものを見ています。気のせいだと打ち消す必要はありません。「うちだけかもしれない」と思って口に出せずにいるなら、そうではない、というのがこの調査の答えです。
原因を決めつけない
食べる量が減った、動かなくなったという変化は、悲しみのようなものかもしれませんが、体調の変化でも同じように現れます。とくに残された子が高齢なら、様子を見る前に一度診てもらうほうが安心です。
多頭飼いでは、1頭を見送ったあとに残された子も歳を重ねていることが多くあります。心の問題として片づけると、体のほうの変化を見落とすことがあります。
期間の目安を持っておく
3割ほどは2か月のうちにおさまっています。半年を超えて続く子も4分の1いました。この幅を知っておくと、いまの状態を過剰に心配せずに済みます。
飼い主自身の状態と連動している可能性があるということは、自分のほうが落ち着けば残された子の様子も変わるかもしれない、という読み方もできます。前後関係は確かめられていないので、あくまで可能性の話です。
この数字は、こう誤読されやすい
誤読1「86.6%の犬が悲しんでいた」
86.6%は、飼い主が何らかの変化に気づいた割合です。その変化の中身が悲しみだったかどうかは、著者自身が「まだ確認できない」と書いています。
「変化があった」と「悲しんでいた」のあいだには、まだ埋まっていない距離があります。見出しではここが飛ばされがちです。
誤読2「飼い主が泣くと、犬が悲しむ」
飼い主の悲しみの強さと、報告された犬の変化の大きさに関係が出たのは事実です。ただし、犬が感じ取っているのか、悲しんでいる飼い主のほうが小さな変化に気づきやすいのかは分けられません。
「あなたが泣いているせいで、あの子も苦しんでいる」という読み方は、この調査からは出てきません。そう読むと、見送ったばかりの人をもう一段追い込むことになります。
誤読3「遺体を見せないと、ずっと探し続ける」
この調査では、遺体を見せたかどうかで変化が続く長さに差は出ませんでした。会わせられなかったことが、その後の長さを決めたとは言えません。
逆に「見せても意味がない」と示したものでもありません。差が出なかった、というところまでです。
誤読4「変化が長く続くのは異常」
6か月以上続いた例が24.9%あります。4頭に1頭は半年を超えていたということです。長引いていること自体は、この調査のなかでは珍しくありません。
ただし、体調の変化が重なっている可能性は別に考える必要があります。長引いているなら、心の問題として片づけずに一度診てもらうほうが安心です。
よくある質問
犬は、仲間が亡くなったことを悲しむのですか?
この調査の著者は「これが悲しみだったとは、まだ確認できない」と明記しています。変化があったと答えた飼い主は86.6%いましたが、同居していた相手がいなくなったことによる不安や、生活のリズムが変わったことへの反応の可能性を残しています。変化が起きていること自体は、多くの家庭で見られた事実です。
変化はどのくらい続きますか?
この調査では、2か月未満が29.4%、2〜6か月が32.2%、6か月以上が24.9%でした。変化がなかったという回答は13.4%です。3割ほどは2か月のうちにおさまっている一方、4分の1は半年を超えて続いています。
亡くなった子の体を、残された子に見せたほうがいいですか?
この調査では、遺体を見せたかどうかで変化が続く長さに違いは出ませんでした。見せなかったことを悔やんでいる場合、この結果はひとつの材料になると思います。ただし「見せても意味がない」と示したものでもありません。
自分が泣いていると、残された子に影響しますか?
この調査では、飼い主自身の悲しみや怒りが強いほど、残された犬の変化も大きく報告されるという関係が出ています。ただし、犬が飼い主の様子を感じ取っているのか、悲しんでいる飼い主のほうが犬の小さな変化に気づきやすいのかは、この調査では分けられません。
食べる量が減っているのですが、様子を見ていいですか?
悲しみのようなものが原因のこともありますが、体調の変化でも同じように現れます。とくに残された子が高齢なら、様子を見る前に一度診てもらうほうが安心です。原因を心の問題と決めてしまわないことが大切だと思います。
出典
Uccheddu S, Ronconi L, Albertini M, et al. Domestic dogs (Canis familiaris) grieve over the loss of a conspecific. Scientific Reports. 2022;12:1920.doi:10.1038/s41598-022-05669-y(2026年8月14日確認)
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